Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

映画『殺人の追憶』

DVDで鑑賞。

ポン・ジュノ監督が『パラサイト 半地下の住人』に先がけ、2003年に制作している。

こにらの方が見応えありという人もあり、その題材からして(当時は未解決事件だった華城殺人事件)重そう。


まだ若いソン・ガンホは、土着の所轄刑事。

ホシを上げるために証拠を捏造しようとしたり、拷問まがいの暴力を振るったり。

そこにソウルからインテリ刑事が派遣される。

日本で言えば、地方の警察に警視庁捜査一課が乗り込むような感じか。


インテリ刑事は、暴力で自白を迫る田舎の取調べ方法を鼻で笑っていたが、取材した女子中学生までが被害者となって激昂、ホシと目星をつけ張り込んでいた容疑者に、ついに暴力で吐かせようとする。

淡々と描いているが、いつしか担当刑事に感情移入し、犯人が憎くてたまらなくなっている自分に気づく。



秋の稲田から始まる。

時は1980年代。

殺人とは無縁の、のどかな田園風景だ。

韓国映画に感じる懐かしさは、こんな自然描写かもしれない。

かつて日本にもあり、今は失われてしまった暮らし。


そこにソン・ガンホ演じる刑事がやって来て、排水溝を覗き込む。

好奇心の強い子どももやってくる。

これが事件の始まりだ。


ラストにも同じシーンが表れる。

時は2003年。

刑事を辞め、ゲーム機のセールスをしているらしいソン・ガンホ。

彼がその排水溝を覗き込むと、女の子がやって来て、

「前にも同じことをしているおじさんがいたよ」と語る。

そこで映画は終わるのだ。


130分の長さを感じさせない緊迫の構成、

農村の明るさと、捜査本部の暗さと。

闇と雨と、どこに強姦魔がいるともしれない恐ろしさと。

誤認逮捕で拷問される怖さも容赦なく描く。


韓国映画にありがちな、感情の奔流やグロい場面は少ないが、それだけにインテリ刑事がキレたときの、彼の憎しみがビンビンと伝わってくる。

アメリカから届いた鑑定結果(英語で書かれている)を読めない所轄刑事の悲しさも。


未解決のまま作品が閉じられたことで、こちらは落ち着かない。

ネット検索すれば、2019年に服役中の囚人のDNAが犯人のものと一致し、解決したとあるが。



後続作品が多いのも、この作品の力だろうか。

『殺人の告白』

こちらは2013年の韓国作品。それをリメイクして『22年目の告白 私が犯人です』は藤原竜也主演の邦画、2017年。

DVDレンタルして、先程見終えたばかり。

どちらも時効成立にトリックがあり、どんでん返しもある娯楽作品だ。

面白かったが、ポン・ジュノ監督作品と比べたら、やっぱり横綱と十両くらいの差はあるかな。