『空気を読む脳』と『グエムル』
ヤマザキマリさんとの対談『パンデミックの文明論』が面白かったので、中野信子さんの著書を借りてみる。
著者は東大大学院卒の脳科学者、かなりの秀才だ。
科学者らしく実証に基づいた展開は論理的で、読者である一般大衆にもわかりやすく、飛躍することなく、脳の特性について述べている。
私のようなおばさんでも夢中になって読んでしまった。
サイコパス、不倫、容姿、幸福度など、興味ある話題選びも上手く、脳科学の角度から切り込む視点が新鮮だ。
おばさん脳は読んでもすぐに忘れてしまうけれど、この歳になれば、それも気にしない。
今日のDVD観賞は『グエムル 漢江の怪物』
ポン・ジュノ監督
2006年制作作品
怪物モノだし、写真を見ても娯楽色満載で、〈笑えればいいかな〉レベルの期待度だった。
のっけから店番しながら眠りこける男登場。だらしなく、店の客に出すスルメを炙りながら、足を一本くすねたり。
そしてこの救いようのないダメ男を演じるのがソン・ガンホ。
どうしようもないダメ男になってニワトリのように寝てばかりいるのは、幼少時母親に逃げられタンパク質が足りなかったから、と説明する父親は右側の男。
ちなみに真ん中は大学は出たものの、就職先がない弟。この家族にしてはまともで、ダメ男の兄(左)をバカにしている。
観客を身構えさせないで、卑近なところから描いて、それがまた可笑しくて。
『殺人の追憶』を観た後では、この主人公がソン・ガンホだとはとても思えない。
全体を敢えて映さず、部分のアップから入る手法に、今回もすっかりのめり込んでしまった。
なんといっても、娘を怪物から救うという展開に、組織ではなく家族で立ち向かうというのがユニークだ。
次第に浮かび上がってくるのは、在韓米軍の傲慢さ。
監督は朴槿恵大統領時代はブラックリストに載る左派だったらしい。
この映画を観れば、さもありなんと思う。
『パラサイト 半地下の家族』の面影は既にある。
ポン・ジュノ監督のアカデミー賞受賞は遅すぎたと言う意見に、いまなら頷ける。
まだまだ私の韓流ブームは続きそうだ。
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