ピリッと甘く
20数年前、連絡も雑談も電話が主流だった頃、
児童文学の師に言われたこと。
「腹の立つことがあっても、少なくとも1週間か10日は考えてごらん。それでも考えが変わらなければ反論を聞くよ。」
あるいは、
「読書感想文を書かせるのは、出版社の商魂だよ。書くという行為は、そこで成長を止めてしまうんだ。人に読まれることを前提にした文章で本音は書けないし、キレイゴトでまとめても何の意味もない」
師は、学生時代に音楽喫茶で聴いたクラシックの名曲の話をした。
当時はレコードも普及しておらず、その店に行かなければ聴けなかった音楽を、久しぶりに聴くと違和感があるのは何故か。
何度も何度も自分の中で再生するうちに、自身の中でだんだん音楽が変容していたのだ。
自分のものにする、その過程を大事にしなさいと言われた。
じっくり自分の中で温めよ、ということか。
リクエストして他館から取り寄せてもらった本、新作映画、念願の遠出、
書きたいことはいっぱいあったが、じっと自分の中に収めて…「忘れる」のを待った。
1週間で忘れてしまうなら、書くほどのことではないのだ、と。
温めていれば、思い出はだんだん甘くなるのか、それともピリッと辛くなる?
生ワサビ付きのプレミアムわさびソフトクリームは、晩秋の安曇野で。
甘くもなく、かと言って、さほどの刺激もなく。
そのさじ加減が大事なのもしれない。
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