Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

過去に戻れたら

レンタルDVDを返却するため、観た証として感想を書かねばならない。

これが私的には面倒で、スルーしてしまいたいけど、そうすると同じ作品を何度も借りてしまう。

いつか何かの役に立つと信じて記録した頃もあったけれど、もう何の役にも立ちはしないだろう。

次に借りることがあったとしても、忘れてもう一度楽しめれば、それでいいのではないか。

そうは思うものの、貧乏性なので記録します。


映画『バタフライ・エフェクト』は、何度見ても面白い。

続編である2と3は、過去に戻って人生をやり直すところは同じだが、配役もストーリーも全く別物、作りも単純で一度見るだけでもうんざりだった。



こちらはメモを取りながら見ないと、頭が混乱してくる。

3度観たが、その都度発見があり、その都度ドキドキする。

(以下、作品の内容について書いています。

これから見る予定の方はスルーして下さい)





子ども時代から始まると、つい人生を語られた気がするものの、本当の始まりは病院の一室、追われながらメモを残すシーンであることを忘れてはならない。



さて、「13年前」という字幕で始まる子ども時代、父親は精神を病んで入院しており、主人公エヴァンは母子家庭。

遊び仲間のビリー、レニーは同級生(7歳)、ケイリーはビリーの妹。

ビリーとケイリーは父子家庭で、母親は離婚している。

この父親がロリコン趣味でケイリーやエヴァンのビデオを撮ろうとする不穏な動き。

ここで飛ぶ記憶。


6年後(13歳)留守宅で遊ぶ4人が父ジョージが(不当に?)所持するのダイナマイトを持ち出し、スリルを求めて近所のポストにそれを放り込む。

また記憶が飛ぶ。


事件のショックでレニーは廃人同様に、ビリーはグレてエヴァンの犬を焼き殺そうとする。

何か事件が起きる寸前に、飛ぶ記憶。


「事件のその後」を主人公と共に取り戻す流れにいつしか一体化し、どれが本当の現実なのか見ている方も分からなくなる。


ケイリーを救うと過去が書き換えられて、2人のの幸せな生活が始まるのは嬉しいけれど


それを妬んだビリーをエヴァンは殺してしまい刑務所へ送られ


刑務所から脱出するために日記を読んで過去に戻るあたりから、ん?と黄信号が灯り始め



娼婦に身を落としたケイリーから、過去に戻れるならダイナマイトから母子を救え、と言われる。


犬を救えばビリーが死に、母子を爆破から救えば、今度はエヴァンが不具になる。

ビリーとレニーは真っ当な道を進むが、ケイリーがレニーの恋人になっていたり。

皆が真っ当になったのだから、これで良さそうなのに、エヴァンは面白くない。

どこをどう直しても上手くいかない。

だからやり直す。

やっぱり何かおかしい…


そこで最初のシーンに戻る。

精神病院と思われる施設に入院するエヴァンが、ケイリーと初めて出会うシーンを8ミリ映写機で見る。

そして過去に戻り、ケイリーと関わらない選択をする。

ケイリーとビリーは離婚した母親と暮らすことを選び、その後の事件は起こらないことになる。

やれやれ一件落着、と思う。

ラストはさらに8年後の社会人(医師)となったエヴァンが、雑踏のなかケイリーとすれ違う。


(このラストには別バージョンがあり、声をかけて再会を喜ぶふたり。いや、やっぱりそれはないな)


最初はハッピーエンドだと思っていた。

そういう作りになっている。

が、そこで冒頭のシーンが重要になる。


この病院の一室以外、全てはエヴァンの妄想ではないのか。

最初の「13年前」、最後の「8年後」という表現はどこを基軸にして?

と考えると、やっぱり病室のエヴァンなのだ。


7歳の時から記憶が飛ぶ経験をする。

その飛んだときが、過去から戻って人生をやり直すとき。

ということは、この7歳の記憶から大学生となり医師になる(らしい)ラストシーンまで、全て精神病者の妄想、ということではないか。


過去に戻ってやり直せたらと誰もが思う。

そんな願望を映像化した作品は多いけれど、

そんなことはあり得ない、これは全て妄想に過ぎないという読みも可能にした。

ちょっとほろ苦い演出だな〜


過去に戻れたら。

「たら、れば」は老人の得意分野。

でも、何かを変えられたとしても、結果は一長一短だよ、

と言われた気がする。

願望に留めておくのがいいよ、と。


タイトルの「バタフライ・エフェクト」は、映画の冒頭に字幕で語られる。

「どこかで蝶が羽ばたいたら、地球の裏側では台風になるかもしれない」(カオス理論)


過去をいじることによって、思いもよらない現実を迎えてしまう。

だから過去を変えてはいけないのだ、と。