本当の目的地
朝7時に出発し、高速と国道を乗り継いで、お茶休憩、ランチ休憩しながら、その目的地にたどり着いたのは午後2時。
学生時代の貧乏旅行とは違い、ワイドビューや温泉旅館に泊まっての安曇野も魅力だったけど、体力と若さがなければ出来ない車旅、楽しませてくれた旅友には本当に感謝です。
もしも鉄旅だったら、松本で大糸線に乗り換え、信濃松川駅からはレンタサイクルのつもりでした。
安曇野はかつてアンノン族も訪れた青春のメッカ、自転車文化もスマートで、町全体が小スイス?のような瀟酒さ。
宿にも(たぶん駅にも)、昨日紹介した大王ワサビ農場にもレンタサイクルが常備されています。
目的地の安曇野ちひろ美術館
広大な敷地の手入れだけでも大変だろうと、田舎者はついそちらを心配してしまうのですが、本当に隅々まで手入れが行き届いた気持ちの良さ。
玄関を入り、入場料シニア料金を払えば、もうそこはちひろの世界。
実は、彼女の絵本は司書として勤務した名古屋の図書館でも散々目にして、好むと好まざるとに関わらず、その名前は刷り込まれていたのです。
女性受けしそうなパステルカラーの子供の絵は、暗い青春時代を送っていたわたしには、少し重かった。
どちらかといえば、田島征三やスズキコージのような破天荒な絵が好みでした。
彼女の絵は、満ち足りた生活の片隅にある〈装飾品〉のようなものだったのです。
その思いが変わったのは、一昨年、友と越前市を旅し、ちひろの生家を訪ねたときのこと。
うっかり通り過ぎてしまいそうな、民家を改造した町の小さな美術館として、ひっそりと佇んでいました。
いや、美術館というより、子育て中のお母さんが憩えるような絵本館。
そこでたまたま見た、ちひろの紹介ビデオで、この安曇野の美術館を知ったのです。
旅友と、次の旅行はきっとここにしようと言い合ったものの、12月から3月までは冬季休館、4月からはコロナ禍でそれどころではなくなり。
今でもコロナは収束した訳ではないけれど、もう我慢の限界、GO TOの勢いに乗って決行。
友人のおかげで、鉄旅のリスクを犯すこともなく、ちひろ美術館のふたつ目をクリアすることが出来たのは喜びでした。
そうそう、ちひろの絵との出会いが「トットちゃん」という人も多いのでは?
この安曇野ちひろ美術館の館長は黒柳徹子さん、トモエ学園の電車の教室は、館内にも外にもありました。
館内の教室。
黒板の日付は、ちゃんと当日のものです。
傍らの絵本コーナーでは、女性がひとり童心の世界に。
松本在住の伊藤まさこさんの『松本12ヶ月』には、この場所で娘さんと本の世界に遊ぶたのしさが溢れていて、それは羨ましい限りなのですが。
外のスペースに設置されたトットちゃん電車。
こんな時期でなければ、このスペースで絵本を読んだり、お茶したり出来るはずでした。
でも、旅行者として安曇野を訪れるのも悪くない。
宿はすぐお隣のすずむし荘。
館内もちひろの世界に溢れていて
もう一度、ちひろの世界を楽しめるのです。
盆地の夕暮れは早く、午後3時はもう夕方のよう。身を切るような風に身をすくめ、つい足早に先を急いでしまうけれど。
朝日の中の美術館だったら、きっと印象も違っていただろうな。
でも、まっしぐらに、ここにやってきた。その気持ちを大切にしよう。
俗人の私は、温泉と食事のことで、もう頭がいっぱいなのです。
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