Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

記憶を遡る

メメントとは、思い出せとか、忘れるなという意味らしい。

「メメント・モリ」 死を忘れるな

このタイトルも、そんな意味合いか。



20年も前に作られた映画なのに、

しかも何度も観賞しているはずなのに、

やっぱり観るたびにハラハラ

それほどよく出来た映画だ。


超難解映画とも言われる。

時系列が入り乱れているから、のようだ。

それがわかっているので、今回は混乱なく?観たが、それでも理解出来たとは言い難い奥の深さ。


妻を犯し殺害した犯人を追う主人公は、頭部に受けた損傷のため、記憶喪失となる。

全て忘れるのではなく、前向性記憶喪失というのか、最近の記憶が10分しか持たないのだ。

彼が頼りにするのは、ポラロイド写真と、そのメモ、体の刺青だけ。

他人のメモは信用出来ないので、自分のしか残さない。


この主人公が語り手なので、観客も不透明なフィルムに包まれたまま。


そして、この主人公が不都合な写真は消し、面白くない人物には良からぬコメントを残し、さらにその記憶をなくしてしまっていたら、当然、観客はミスリードされる。

それが超難解映画と言われる所以なのか。


映画が進み、観客にも事情がわかってくると、ヤバいのは主人公のアンタだよ、ということに。


だから、後味は良くない。

難解なのに、もう一度観る気にはなれない。


でも、よく考えたら、我々の記憶って、そういうシステムなんだよね。


そう思うと怖くなる。

時間を遡る描き方は型破りだけど、記憶のシステムは時間を遡っていないか。

記憶って本来、そんなものだ。

今から考えて都合の良い過去だけ活かしている。

都合の悪いことも時々顔を出すけど、無理やり押し込めて知らん顔。

だから生きていけるんだけどね。


だから『メメント』の主人公は、とっても痛い。

彼を笑えないところが、この映画の怖さだ。