Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

映画『シークレット・サンシャイン』

意味のよくわからないタイトル。

レンタルショップではタイトルの50音順に並んでいるので、何度もスマホで確認するのだが、すぐに忘れてしまう。


が、観賞後はもう決して忘れない。

舞台となった都市「密陽」を英語読みすると、そうなるから。

が、それは表向き。多分本当は、ソン・ガンホ演じる、ヒロインを助ける影の男を指すのだろう。


142分と長い。

実際はもっとあったような気がする。

同じようなテンポで描かれ、人物に密着したり恐怖を助長するような演出もなく、

かといって決して穏やかななのでもなく。

泣き叫ぶシーンもあれば、男を誘惑する場面もあるのに、ヒロインの嘆きの深さが作品の重さとなって、どうにも身動き取れない。


シングルマザーが事故死した夫の故郷に新天地を求めソウルから移住、その途中で車が故障し修理屋を呼ぶ。

その修理屋がソン・ガンホ演じる「社長」であり、ヒロインのシネに下心プンプンで近づくのだが、次第に彼女の生活に入り込み、当てにされる存在にまでなる。

俗人で品がなく、頭も悪そう。

ヒロインの知的な清楚さとは、どう考えても釣り合わない。

彼女の弟にも「あなたは姉のタイプではない」とわざわざダメ出しされるほど。


ただ一つの取り柄は、打たれ強いことか。

これだけ言われても、彼女からさんざん軽んじられてもビクともしない。

この鈍感さが、若い母親の絶望をどれだけ救っているか。


典型的なイヤな男である。

彼女を想って色々気を利かせているつもりが、結局、邪魔しかしていない。

底流にヒロインの嘆きがあるから、そんなすれ違いも愛嬌のように感じられるのだが。


邦画だったら、ここまで描けただろうか。

身代金誘拐というテーマは日本でも描かれるが、ここまで母親の嘆きを追究しきれただろうか。


実はもう一枚借りていて、

同じソン・ガンホ主演の『殺人の追憶』

『パラサイト』の監督作品ということで期待大なのだけど、よほど体調のよいときしか見られそうにもない。