Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

わたしの『若草物語』

やっと映画館解禁

厳密には自粛を解禁

2月末に『ミッドサマー』を鑑賞した頃から、一気にコロナの警戒感が強まった。

本来なら3月27日公開予定だった『ストーリー・オブ・マイライフ』


2ヶ月以上待って、やっと。

アカデミー賞候補にも名を連ね、ベストタイミングでの公開のはずが、まさかの延期となった。


『若草物語』は『赤毛のアン』と並んで往年の少女のバイブル的作品で、わたしも姉に勧められて読み、夢中になったのは確か中学生の頃だった。

作家志望のジョーに感情移入して、彼女がローリーのプロポーズを断ったことがどうしても理解できず、突然現れた貧乏な大学教授と結婚したのは裏切りとしか思えなかった。

先に続編を読んでいた姉に「ローリーはジョーとは結婚せずに、あんなエイミーなんかと結婚するんだよ!」と告げられた時は、目の前が真っ暗になる程のショックを受けたものだ。


今思えば、小説として成功させるためには、ジョーとローリーを結婚させてはいけなかった。

『風と共に去りぬ』のスカーレットがレットがすれ違ったように、ヒーローとヒロインがうまくいっては読者の記憶には残らない。

『赤毛のアン』のギルバートとアンが結婚せず、すれ違いのまま別の人と結婚していたら、シリーズはもっと面白くなったかもしれない。

『赤毛のアン』(少女時代)が面白かったのは、ギルバートの気持ちを知りながら、頑固なアンが彼を許さなかったからなのだ。

『半分、青い』の鈴愛と律も、一度はすれ違った。

すれ違いは恋愛の王道だ。


閑話休題

昨日やっと公開の運びになった『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』


残念ながら、映画館にまだ往時の賑わいはなく



このスクリーンの観客はたった3人。


ジョー役のシアーシャ・ローナン

この颯爽とした笑顔を見るだけで、ジョーの生き方に憧れた自身の思いが重なってしまう。

どこかメリル・ストリープを彷彿させる風貌、

衣装や自然の美しさ、時代背景など、新たな感動もいっぱいあった。そのメリル・ストリープも頑固で金持ちの伯母で脇を固める。


4人姉妹が子犬のようにじゃれ合いながら、母を慕い、父を敬う生活、

そんな大家族の中で、ジョーは結婚の必要を感じなかった。

彼女が欲しかったのは理解者であり、気のおけない友だちだった。

が、長女のメグが結婚し、三女のベスが召され、末っ子のエイミーはヨーロッパへ。

ひとり取り残されたジョーの少女時代は終わった。

かつての少女は成長し、新しい家族に形を変えていく。


四女エイミーは作者に愛されていなかったのか、ひどくわがままでオシャレのことしか頭にない、ジョーの対極にいる女の子として描かれるため、私はローリーの選択に納得できなかったけれど、この映画はちょっと違う。

エイミー役のフローレンス・ピューはもっと地に足のついた演技をしていた。

彼女は時代の求める普通の女の子だった。

好きな人と結婚したい、

ライバルのジョーのお下がりはイヤ、

自分の分際を知り相手を立てる、

そういう普通のことが出来る女の子として描かれる。

この映画を見て、ローリーの選択にガッカリする人はいないかもしれない。


そのフローレンス・ピューは

『ミッドサマー』のヒロインを演じる。



これからが楽しみな女優だ。


そうそう、ローリー役のティモシー・シャラメは相変わらず美しい。

脇に置くのはもったいない人だ。