ひみつ
孫を預かる日は、緊張するわけでもないのに眠れない。
昨夜は庭仕事の疲れで9時には灯りを消したのに
、ラジオの記憶ばかりが残る長い夜に。
中でも眠気が吹き飛ぶのが「ラジオ文芸館」
昨夜は谷崎潤一郎の『秘密』だった。
これがプロのアナウンサーの技術もさることながら、効果音や演出の上手さで読書とは違う味わい。
朗読向きの小品、主人公の男が女装をして出歩き、かつて船旅で短い関係を持った女性と隣り合わせる。
彼女の粋な佇まいは、結構イケていると自負していた女装のプライドを傷つけられ、なおかつさりげなく女性に呟かれる。
“arrested at last”
実は朗読の前にアナウンサーが断りを入れていた。
「途中、arrested at lastという英語が出ます。これは『とうとうつかまってしまった』という意味です。注意して聴いて下さい」みたいな。
そう言われれば気になる。
「とうとう捕まえた」ではなく「つかまってしまった」?
女性がそういうのは何故?
気になり続けて、最後まで聴いてしまった。
主人公は敗北感から、女性を男の征服欲で支配下に置こうと誘う。
遊び人(粋人?)の主人公は、女性は玄人筋であろうと思い、その存在に遊び心をそそられたのだ。
女性も男を目隠してその住処を隠し、逢瀬を続けた。
ところが、男はその秘密を暴きたくなる。
ほんの少しでいいから、目隠しを外して欲しいと甘える。
一瞬の隙だった。
そこは男の住居にほど近い場所であることがわかってしまう。
そして恋も終わる。
まあ、そんな話だった。
谷崎らしいといえば、そうかもしれない。
男女の機微は理屈や損得では片付かない所も確かにある。
いや、こだわったのは“arrested at last”の意味だった。
ネット検索したら「見ぃつけた」とある。
なあんだ、そういうことだったのか。
深夜便のアナウンサーさん、直訳すぎてかえって意味深になってしまったような。
今日も一日子守。
4人の孫が駆け回る。
やることがなく日がな一日手入れしている庭の
ベンチに座って『秘密』を青空文庫で読む。
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