Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

映画「ホテルローヤル」

11月13日の公開日に観ている。

コロナ禍で映画館に足を運ぶのも躊躇われるような状況下、

にもかかわらず観に行ったのだから、それなりの期待があったのだと思う。


と、ひと事のように書いてしまうのは、正直、観ながら疑問符がいっぱい立ち上がってきたから。

本当に観たかったの?

どうして観に来たの?

原作が直木賞受賞作だから?

波瑠さん主演だから?

「あさイチ」に原作者の桜木紫乃さんが出演していたから?



北海道の釧路湿原を背景にしたラブホテル、それだけで人を呼べるシチュエーションだ。

主人公は「雅代」(波瑠)ではなく、ラブホであることは間違いない。

普段、隠されている場所、

誰も話題にはしたがらない場所、

そんな場所だからこそ、そこに繰り広げられる人間ドラマを観たいと思う。

人が裸になり、裸にされる場所。


社会の裏側を覗いてみたい、そんな好奇心は、けれど、ある意味裏切られる。


(以下、ネタバレを含みます)


はっきりと時代設定はされていないように思うけれど、昭和の香りの漂うラブホ。

家族経営だが、客室清掃係としておばさん2人が雇われている。

波瑠は経営者・安田顕の一人娘。

美大を目指していたのか卒業したのか忘れたけれど、そこだけラブホとは程遠い自室に、キャンパスを立て、釧路湿原を描く。



その真逆の存在が、従業員のおばさんたちが休憩するボイラー室?みたいな作業部屋。

こちらは暗く不潔、まさにラブホの本性みたいな。


利用するシーンではキレイだが、従業員が掃除する時は、恐ろしく馬鹿げた装置に見える客室。

これもラブホの真実?


家ではエッチ出来ない夫婦、

補導された女子高生と担任教師、(雨宿りのためにやむなくラブホに、という設定はあり得るだろうか)

などのエピソードが盛り込まれ、

最後に波瑠が、密かに想いを寄せていたエッチ屋さん(アダルトグッズの営業マン)に問う。

「セックスって、そんなにいいものですか」

それに対する松山ケンイチ(エッチ屋さん)の

答えがいい。

「大人は裸になって遊ばなければいけない時があると思います」


ベッドに横になって、初めて気づく天井のクモの巣。

「掃除する時はいつも下を向いていた」という波瑠の呟きが、この映画で最も心に残るシーンだ。




ラブホを舞台にしながら、描かれるのは夫婦、

間違いなく夫婦。

逆照射のように。


正直、こういう演出についていけなくて、この監督(武正晴)の代表作『百円の恋』をDVD観賞してみれば、

ああ、納得。

気分が悪くなりそうなほど、不潔感に溢れてる。信念の不潔だ。

安藤サクラさんの力演もあり、作品としてははるかに『ホテルローヤル』を上回っている。


低予算映画は活気とやる気に溢れている。

メジャー化すると、どうしても制約が大きくなるんだろうな。


半月も書きあぐんで、ブログに載せるのは辞めようかとも思ったけれど、

最初にも書いたように、他者の目からラブホという世界を見てみたかった。

どんな風に書こうかと、ずっと考えて、結局、この程度になってしまった。

やっぱりブログにも制約は多い。


性風俗産業としてのラブホという存在を、女性の視点で捉えたところが、この作品(小説)の魅力なのだと思う。

映画を観て、その辺りが崩れてしまった。

オトコが見ても面白くなるような演出はいらないのだ。