Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

最近の読書から

高橋治・作『名もなき道を』は友人の紹介で。

古い本で、地元の図書館には所蔵がなくリクエスト。

作者の高橋氏は父とさほど変わらない世代、著作を読むのは初めてで、こんなこと(友人のすすめ)がなければ、絶対に読むことはなかった。

小説ではあるけれど、語り口はノンフィクションに近い。

吉松という教師が、教え子〈槇山光太郎〉のことを知りたいと、彼と関わった様々な人に聞き込み、光太郎なる人物の真実に迫らんとする。


語り口は誠実、緻密、さすが東大出の文士、

が、それ故にか、どうしても時代を感じてしまう。

旧帝大のしがらみ、男たるもの出世してなんぼの考え方、

ああ、父が酔っ払ってはほざいていた学歴への憧れ、家柄、地方の名士、御曹司…そのものの世界

何かもう、見たくもないものがしっかり詰まっている感じ。


友人はプライバシー裁判で、初めて作家側が勝訴した事例として注目したらしく、柳美里さんの『石に泳ぐ魚』にも興味を持っていた。

柳美里さんは確か敗訴している。


が、今読んでも、既に書き直されているせいか、どこに事件性があるのかわからない。

プライバシーを侵害されたと言っても、今や関係者は皆故人になってしまっているではないか。


もう一冊、リクエストしていたのが、こちら。


眠れない夜に、らじるらじるの「聴き逃し」で「石丸謙二郎の山カフェ」を聞き、この絵本を知った。

エマおばあちゃんは67歳で確か8人の子育てを終えてから、アパラチア・トレイル3500キロを歩き抜いたのだという。もちろん女性では初めての快挙。


最初は道に迷って挫折、

体を鍛え、準備を整え、再び挑戦する。

決してお散歩のような遊歩道ばかりではなく、

熊と出会ったり、ネズミと一緒に野宿したり、

生半可な覚悟では出来ない旅だ。



何ヶ月もかかって、ついに完歩。

すごいのは、翌年、再び挑戦して完歩していること。

最初の動機は、雑誌の写真を見て、行ってみたいと単純に思ったこと。

2度目は、今度はじっくり見たいと思ったこと。


すごいなぁ。

1日、20キロから30キロは歩いて、

2000メートル級の山を越え、

靴は4足履き潰し、最後はソールを紐で結えて凌いだという。



足を捻り、転んでメガネを割り、それでもゴールにたどり着いた執念。

こういう女性の先達に、どれほど励まされることだろう。


昨日聴いた「山カフェ」では、女性初のエベレスト登頂者、田部井淳子さんを特集していた。


私の力の源、まだまだ頑張れる。