Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

今頃になって初めて観た

趣味人倶楽部の映画コミュで、タイトル当てのクイズがあり、なかなかマニアックで当たることがない。

が、久しぶりに覗くと、珍しく見当のつく映画だった。



昭和52年に公開されている。

はや鬼籍の人となってしまった高倉健さん、渥美清さん。

倍賞千恵子さん、桃井かおりさんもまだ若い。

ダメ男の典型みたいなチャラ男を、武田鉄矢が演じていて、彼がその後金八先生になろうとは誰が思っただろう。


桃井かおりが口ずさむ『なごり雪』も、武田鉄矢も、真っ赤なファミリアも、青春時代そのもので、懐かしいことこの上ないのに、

大ヒットし、各賞総ナメの名作なのに、

なぜ観なかったのだろう。

天邪鬼だな。


着想を得たという『幸せの黄色いリボン』は、受験勉強の深夜放送か、下宿部屋のアトムボーイか忘れてしまったけれど、しみじみ聴いた記憶があった。

その思い出を冒涜するようなアレンジは許せなかったと、

過去の青臭いわたしが、クソ真面目な顔をして言う。


当時の高倉健さんは、まだまだヤクザ映画の人であり、倍賞千恵子さんは「下町の太陽」、桃井かおりさんは舌足らずなお姉ちゃんだった。


やっぱり、出会うべきタイミングは今だったのだろう。

今じゃなければ、この映画の良さは分からなかった。


武田鉄矢のチャラさは国宝級(笑)

桃井かおりの頼りなさも格別で。

対する高倉健の大人びていること。

武田鉄矢の軽々しさを観かねて「まるで草野球」という。ミットもないと。

こういうオヤジギャグが、大真面目に言われることの、なんとも言えない可笑しみ。


季節は残雪の網走から、新緑の大地へ。

車が夕張に近づくにつれ、野に咲くタンポポの黄色が、いやでも目に飛び込む。

大地を挙げて健さんを迎えているようだ。

この盛り上げ方がたまらない。


ラストシーンは何度見ても泣ける。



夕張炭鉱はまだ存在し、そこで暮らす人々がいた。

雨露凌げる屋根があることを、素直に喜べた時代だった。

貧乏自慢が成り立った下宿生活。


今でもこの映画は名作として生き、『神田川』は懐かしのメロディの常連だ。

貧しさは日本人の原点かもしれない。


孫の通う小学校にもコロナの影が忍び寄り始めた。

自粛のお正月になりそうだ。


こういう映画を観ると、しぶとく生きたいと思う。

時代の生き証人になれるものね。