Linの気まぐれトーク

映画と小説の日々

映画『ミナリ』

久しぶりの封切り映画。

コロナの影響で枯れ荒んでいた映画館に、アカデミー賞候補作品が上映され始めた。

それだけで嬉しい。


シニア料金とはいえ、1,200円払って観る映画は100円のレンタルビデオとは違うし、100円で貸し出されている名作もかつては劇場には人を呼んでいた。


映画館で映画を観る

それが正しい鑑賞法だと改めて思う。


そんなことは、どうでもよくて、



1980年代、一旗挙げたいと韓国から一家移民してアーカンソー州の土地を開拓し、トレーラーハウス住まいの貧困から立ち上がろうとする家族の苦闘を描く、


ということらしいけれど、

「大草原の小さな家」とか、「オレゴンから愛」とか、

そういう開拓ものを期待するのか、

韓国映画独特の濃さを求めるのか。


正直、中途半端だ。


主演のスティーブン・ユァンは『バーニング 劇場版』でスタイリッシュなベンを演じた人。

妻役の女優は『海にかかる霧』で可憐な娘を演じていた(らしい)。

気付かなかった。

それだけ貧しい移民一家になり切っていた、

というより、朝鮮民族のキムチ的エネルギーがアメリカの広大な土地に飲み込まれてしまったのかもしれない。


貧しい、と書いたけれど、

彼ら夫婦は私と同世代だ。

あの時代、トレーラーハウスとはいえ幾部屋もある住まいは全然貧乏臭くない。


そう、これはアメリカ映画なのだ。


俳優も監督も韓国系、話す言葉も半分以上は韓国語、でも企画・制作はアメリカ、配給もアメリカ、名前だって主人公の父親はジェイコブ、妻はモニカ、長女アン、長男デビッドなのだ。


親は必死だが、子ども世代はもっと自然にアメリカを受け入れていくだろう。

それがタイトル「ミナリ」の意味らしい。

セリは大地に根を張った2代目が1番美味しいという。


そんなこんなで、濃い韓国映画を期待して行くと肩透かしを喰らう。

『パラサイト 半地下の家族』とは全く違う。


アジア系の移民がアメリカに根を張っていくまでを、さらりと他人行儀に描いてみせた、

アメリカ人の目線で。


何度も言うけれど、

これはアメリカ映画なのだから。